それは深夜の二時を回った頃のことでした。寝る前にトイレを済ませようとしたところ、レバーを引いても水が勢いよく流れず、それどころか便器内の水位がじわじわと上がってくるのが目に入りました。一瞬で頭が真っ白になり、最悪の事態が脳裏をよぎりました。ここは賃貸アパートの二階で、もし水が溢れ出して床を濡らしてしまえば、下の階の住人に多大な迷惑をかけてしまいます。私は慌ててスマートフォンのライトを片手に、便器の横にある止水栓を探しました。マイナスドライバーが必要なタイプでしたが、生憎と手元になかったため、台所にあった百円玉を使って無理やり回し、なんとか給水を止めることに成功しました。しかし、一度上がった水位はなかなか下がらず、私はバケツと紙コップを持ち出して、汚水を汲み出すという屈辱的で過酷な作業を数十分間続けました。その後、入居時に渡された書類の束をひっくり返し、管理会社が提携している二十四時間対応のコールセンターに電話をかけました。オペレーターの方は非常に冷静で、私の動揺を鎮めるように丁寧に状況をヒアリングしてくれました。幸いにも、その物件は緊急サポートサービスに加入していたため、一時間後には提携の業者が駆けつけてくれました。原因は、私が良かれと思って使っていた流せるタイプのお掃除シートが、配管の曲がり角で固まっていたことでした。業者の方は手際よく専用の道具で詰まりを解消してくれましたが、その際に放たれたアドバイスが今でも胸に刺さっています。賃貸の古い配管は流せるシートであっても詰まりやすいので、極力ゴミ箱に捨てるべきだという教訓です。今回の修理費自体はサポートサービスの範囲内で収まりましたが、もし深夜に業者を自分で呼んでいたら数万円の出費になっていたことでしょう。賃貸暮らしにおいて、緊急連絡先をすぐに分かる場所に貼っておくこと、そして設備の特性を理解して丁寧に使用することの重要性を、身をもって知る夜となりました。それ以来、私はトイレに過度な負荷をかけないよう、細心の注意を払って生活しています。