下水道工事の費用を語る上で避けて通れないのが、それぞれの家庭が持つ土地の固有条件です。実は「隣の家が五十万円だったから、うちも同じだろう」という考えは、この工事に関しては通用しません。ここでは、条件によって費用がどのように変動するかを事例研究として見ていきます。まず典型的な低コストのケースは、道路と宅地に高低差がなく、かつ水回りの設備が道路側に集まっている家です。掘削する距離が短く、障害物も少なければ、人件費と材料費を最小限に抑えられ、三十万円から四十万円程度で工事が完了することもあります。一方、費用が跳ね上がる代表的なケースは、いわゆる「旗竿地」や奥に細長い敷地を持つ住宅です。道路にある公共桝まで数十メートルにわたって配管を引き回す必要があり、その距離に比例して掘削費用とパイプ代が加算されます。さらに、地面が岩盤であったり、他の埋設物(ガス管や水道管)が複雑に入り組んでいたりすると、手掘り作業が増えて工期が延び、百万円を超える請求が来ることもあります。また、住宅の床下が非常に低い場合や、逆に道路よりも敷地が低い「沈み地」の場合は、自然の勾配だけで汚水を流すことができません。この場合、汚水を一時的に貯めて電動ポンプで汲み上げるユニットを設置する必要があり、この機器代とその設置工事費だけで二十万円から三十万円ほどが上乗せされます。さらにポンプは電化製品であるため、将来の電気代や十数年ごとの買い替え費用も考慮しなければなりません。敷地の表面が高級なタイルや石張りである場合も、それを一旦剥がして元通りに復元する技術料が高額になります。このように、下水道工事の費用は、単なる配管の長さだけでなく、その土地の物理的な制約をいかにクリアするかという技術的難易度によって決まるものなのです。環境負荷の低減という公的な意義も含め、トータルでのコストパフォーマンスを考えれば、下水道への切り替えは極めて理にかなった選択となります。
敷地条件で変動する下水道工事費用の例